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研究紹介(実験・観測系)

担当教員:村山 教授
大都市東京及び東京湾の大気環境

近年、ヒートアイランドなど都市化に伴う異常気象が社会的に取り上げられて久しいのですが、今まで、環八雲や関東地域の高濃度大気汚染現象の解明のために多くの観測キャンペーンに本学が都心にある立地条件を生かして参加してきました。また、湾岸にあることから、海陸風によって汚染物質が複雑に局地循環しているように見えます。このような我々の生活と直接関係の深い大気の最下層部分は、地表から高度2kmぐらいまでの大気境界層と呼ばれています。現在は、雲底高度と大気境界層(混合層)をモニタリング可能なシーロメーターを連続的に運転しています。その他、エアロゾルの化学組成分析、粒径分布や光散乱係数の測定を行なってエアロゾルの特徴を調べています。

また、練習船汐路丸を使った東京湾の大気光学観測も随時、行なっています。

 

黄砂観測ネットワーク(AD-Net)の活動

春季に中国大陸からやってくる黄砂は、東アジア域における典型的な自由対流圏エアロゾルです。この黄砂の輸送機構・過程や光学的性質・放射影響を大気科学の多分野の国内外研究者の協力により総合的に調べるための観測及び研究者ネットワークを春季(3月1日〜5月31日)に立ち上げています。この活動は1997年に、主に全国のライダー研究者によって、LINK-J (Lidar Network Observation of Kosa in Japan)として始められましたが、現在では、活動が広がり、Asian Dust Network(AD-Net)と呼称しています。ライダー観測では光の偏光を利用することで、黄砂エアロゾルの特徴の一つである通常のエアロゾルに比べて大粒径・非球形であることから、偏光解消度という測定量により、識別することが可能です。2001年4月には大規模な国際共同観測キャンペーンACE-Asiaが行なわれ、ライダー速報データの公開により大きく貢献しました。詳しくはAD-Netホームページを参照してください。

近年、エアロゾルの放射効果は地球温暖化を左右する要因として、世界的に注目されています。対流圏エアロゾルの生成・変化の目覚しい東アジア域は経済発展に伴う工業起源の大気汚染エアロゾル、また、ここ2・3年増加しているといわれる砂漠域でのダストストーム起源の黄砂など重要な観測域 です。

 

多波長ラマン散乱ライダーの開発及び観測

大気分子の主な成分である窒素分子のラマン散乱光を分光測定することで、通常のミー散乱ライダーより定量的にエアロゾルの光学パラメーター(後方散乱係数、消散係数)を求めることが可能です。また、水蒸気分子からのラマン散乱光も同時に測定することで絶対湿度を求めることが可能になり、エアロゾルへの湿度影響も調べることができます。ミー散乱の多波長情報からはエアロゾルの粒径に関する情報を得ることも可能です。可視(波長:532nm)のラマンライダーに加え、紫外(波長:355nm)のラマンライダーを開発し、観測を行っています。その計測制御システムの開発やミー散乱に基づくエアロゾルの光学的特性のシミュレーション計算も必要な研究です。

 

サンフォトメーター及びスカイラジオメーターを用いた全対流圏エアロゾルの光学的特性

太陽からの直達光及びその周辺光を地上で測定することにより、大気エアロゾルによって直接吸収・散乱される割合を求めることができます。その減衰の程度を光学的厚さで表わしますが、その波長依存性(波長指数)はエアロゾルの粒径分布や屈折率に依存します。スカイラジオメーターから周辺光を解析することによって、全気柱中のエアロゾルの粒径分布を求めることも可能です。これらの季節変化、年変化を自動観測測器を使うことによって可能です。例えば、黄砂現象時は波長指数は極端に小さくなります。